兄貴があたしの目の前にいた。

久しぶりに見た兄貴は、あたしに視線を向けた。

「兄貴、今までどこへ行ってたんだよ!?

藤本さんから兄貴が失踪したって聞いて心配したんだよ!?

あたしと旅行に行くなんてウソついて、一体どこへ行ってたんだよ!?」

あたしは両手で兄貴の両肩をつかむと、早口でまくし立てるように問いつめた。

兄貴はあたしの質問に答えずに、自分の肩をつかんでいるあたしの手をそっと払った。

「兄貴…?」

あたしよりも少し背が高い兄貴は、
「ごめんな、夕貴」

そう言って、あたしに向かって悲しそうに微笑みかけた。

「えっ…?」

何が、“ごめんな”なの…?