何だ、藤本さんが1番か。

思わず舌打ちしそうになったあたしだったが、ホールから流れている空気がただ事ではないことに気づいた。

あたしは中腰になると、ホールの様子がよく見えるカウンターへと忍び足で向かった。

そっとカウンターから顔を覗かせると、コック服の藤本さんとほうきを持っている黒崎さんがいた。

「あれ、誰だ…?」

彼らのそばにいるのは、見なれない顔の男だった。

男は短髪の黒髪に、英語のロゴが描かれているTシャツとブルージーンズと言うラフな格好をしていた。

背は藤本さんと同じくらいだ。

「関西に行ったと言うのは確かなことだけど、そこからさっぱりと行方がわからなくなったんだ。

大輔のとこの従業員はもちろん、彼女の方にも関西は心当たりがないって」

短髪の男は困ったと言うように、藤本さんと黒崎さんに言った。