実はバージンってこと意外にも私には皆に秘密にしていることがある。

それはロマンス小説や恋愛小説が大好きってこと。

それは10年前に一冊のロマンス小説を親友に無理やり押し付けられ「何も言わずに読め!」と命令されたのが切っ掛け。

恋愛モノに全く興味の無かった高校時代の私は小説にツッコミを入れる感覚で本を読むつもりでいたのだから。

小説の内容は昨今大流行りの傲慢ヒーローが主人公の物語。

ドSの主人公がヒロインを悪女だと思い込み、言葉でこれでもかと屈辱を与え続ける。

『この時点で私がヒロインだったらヒーローは先ず生きておらず、

ロマンスからクライムストーリーへ内容が変更していた筈だ……』

お互いに嫌悪感を持っている筈なのに性的に魅かれ合い度々ディープなキスシーンや一線を越えそうな場面が出てくるが、ギリギリの理性で踏み止まるヒーローとヒロイン。

お互いの誤解が解けて和解した後の傲慢ヒーローの溺愛っぷりが”お見事”と褒めてあげたくなったから不思議
”愛は全てを克服す”めでたし、めでたし。

それからかなぁー

決して王子様や御曹司や会社のCEOと結ばれる夢や野望を持っている訳ではないけど、余りにも何も変化の起こらない日常に失望しないため活力源となるロマンス小説を注入するようになったのは……

書店で買うのも照れ臭いから本の購入には必ずネットを利用している。

いつもはもちろん自宅から注文しているのにPCが故障して修理に出している時に一度だけ会社から注文した事がある。

その時はいつものコンビニ受け取りではなく、会社で受け取ることにしたのはどちらもイレギュラーなことだった。

そしてその楽しみにしていたロマンス小説が今日届きデスクの中に入っている。

タイムカードでは大分前に退社した事になっているから、ちょっとだけのつもりで読み始めたら止まらなくなった。

本を読むスピードには自信がある。

お茶を入れて一杯分だけ読み進めてから帰宅しようと本を開いたまま給湯室へと向かう。