ずっと手付かずになっていたファイルの整理しようと思い立ち課内のミーティングテーブルに移動しようとしたら先に作業をしていた社員がいてその場所は諦め他の場所を探していた。

その時山のようにファイルを抱えたまま困っていた私は部長に声を掛けられる。

「大園さん、作業する場所探してるの?

それだったら会議が延期になって空いているからそこを使いなさい。

奥の第三会議室ね」

ポンと肩を叩いて場所を提供してくれた部長

「お気遣いくださり、ありがとうございます」鍵を貸してもらい早速第三会議室へと向かった。

ファイルを互い違いに崩れないように重ねて一番上を顎で支えて持っていると結構な重さがあるし、一瞬片手を離しドアを開けるのも意外とコツがいる。

早く会議用のテーブルに置いて作業を始めようと思っていたから、中に人が居る気配に気付くのが遅くなってしまった。

静かにドアを開けたから私が入って来たのに気が付かないのか?

話し声が止まる様子はない。

「課長、誰か入って来たらどうするの?」

『いや……もう入ってるけど』

「大丈夫だよ。今ここ会議中ってことになってるから誰も入ってこないって」

『だから……ここが空いてるの部長も知ってるよ、森山課長』

「会社の会議室でとか……ホント課長ってお金ないよね? あぁ~ん」

「仕方ないだろ、住宅ローンで小遣いなんてスズメの涙なの……はぁーんんっ」

今ここで何が起こっているのかは見えなくても二人の震える声色を聞いていたら誰だって分かる状況下に居る私。

入って来たのと同様に二人に知られる事なく立ち去る事も考えたけどファイルを支える腕は限界にきていて、痺れた腕から会議テーブルヘ”ドサッ”と思いのほか大きな音を立ててファイルが滑り落ちた。