結局弟達が待ってるから、と言って彼女は帰ることに。

「夜分遅くに、おじゃましました」

 彼女はぺこりと頭を下げた。

「いや別に俺の所為だし……悪ぃな」

 つられて俺も頭を下げる。



「……お兄ちゃん、か弱い女子中学生を一人で帰らす気?」

 ふと、背後から声が。


「菜々未っ、別にいいってば!」

 彼女は焦って首を振る。

 そんなに嫌なのかな?
 軽くショック。
 女にそこまで拒絶されたことねーのに……。


「いいのいいの!! ほら、二人とも照れないの!」

 菜々未が明るくそう言って、俺の背中をどーんと押す。

「……分かったって」

 俺はスニーカーを履いた。

「えっ、えっ!?」


 菜々未のこの顔は、嫌と言っても聞かない顔だ。

 実際俺の方は嫌じゃないし。
 手当までしてくれた、命の恩人……はちょっと言い過ぎかもしれないけど。
 まぁそれに……結構可愛いし?