「――結局お前は一人じゃんけんとやらをやってるじゃねぇか」

「好奇心に負けました」

 菜々未が何故か敬語で言った。


「でさ、半信半疑でやったんだけど、最初あいこで次もあいこだったの」

「そりゃあな」

 俺は頷く。

「でもその次に――」

「その次に……?」

 まさかと思いつつ聞き返すと、そのまさかの答えが返ってきた。



「私が勝ったの…………」




 鏡の自分に勝つ。
 それは――そんなこと――


「ありえない……」



「ありえたんだよ……」


 俺も、菜々未が嘘を言ってるとは思えない。

 思えないからこそ、信じられない。


「それで、鏡の中の私が私に話しかけてきて……」

「なんて?」

 話はさらに信じられないものになっていたけど、それよりも話の続きの方がとても気になった。

「『じゃんけんに勝った君は、僕に誰かの命を奪わせることが出来るよ。誰にする?』って」