「ん?」

「ありがとね……」


「え?」


なぜ私が礼を言われるのだろう。


なにもしてないのに。


「松井……くんにも、お礼言わなきゃ」


「あ、うん。そうだね」


でも、そう言った藍那に、私は異変を感じた。


顔を見れば、ほんのりと赤くなっている頬。




でも私はそれに、気づかないふりをした。


それはきっとこれから、わかってしまうことだから──……。