「はあ……っはあ……っ」

いろんな場所を走り回ってみるけれど、見つからない。


藍那……どこ?


周りをキョロキョロしながら走っても、いろんなドアを開いても、藍那の姿は見えなかった。


足に力が入らなくなってきたけれど、それでも必死に探した。


──ドンっ!


ヘトヘトになった私の身体は、バタリと地面へ倒れた。

階段から駆け上がってきた誰かとぶつかった。


大きな身体からして、男の人だろう。


「三浦さん? ごめん、大丈夫?」


この低い声、優しい言葉。


「松井くん……」


「慌ててるみたいだけど、なんかあった? 立てる?」


そっと差し伸べてくれる手に、私は手を重ね立ち上がった。


「ごめん、ありがとう。それより、藍那見なかった……?」

「えっと……」


松井くんは、目線をキョロキョロ横に動かし、なにか考え込んでいた。


「あ、与沢さん。私の隣の席の」


それに気づいた私はとっさに答えた。

「あ、ああ。あの子か。見てないけど、探してるの?」


「う、うん。早く行かないと大変なことになると思う」

「わかった。俺も一緒に探すよ」


少し急かすように言ってしまったせいか、松井くんはそれを接して一緒に探してくれた。