「あの、そのボール返してもらってもいいかな?」
ずっと女がボールを持っていたことに、困った顔をする男の子。
「あ、はいっ! す、すみません」
さっきまでキレていた奴とは思えないくらい、裏声を出して可愛い子ぶる。
なにソレ。
気持ち悪。
「ありがとう。それにしても、さっき恐ろしい叫びが聞こえたんだけど……」
その恐ろしい叫びというのは
『チッ。誰だよ、ボール投げたのっっ!!』
このことだろう。
そう叫んだぽっちゃりが、突然焦り出して
「あ、ああ……! それこの子ですよ!!」
と、指差したのは
「え……」
私!?
まさか、美形くんにあんな叫び聞かれたからって、人のせいにするの?
なんか、呆れてくる……。
「はあ……」
私は誰にも聞こえないくらいの小さなため息をついた。

