「あ、そろそろ戻ろっか」

すっかり話しすぎて教室に戻ることにした。


藍那は、私に友達になりたいって、そう言ってくれた。

逃げずにちゃんと。


だから、私も逃げちゃいけないんだ。


「ねえ、藍那」

教室に戻ってる途中、私は足を止め、藍那に声をかけた。


「んー?」


「……私は、友達だと思っていた人に裏切られたの……」

少し震える声。

右手をギュッと握りしめた。


「え……」

藍那も足を止め、振り返った。


「だから私は友達なんて作らなかった。でも、作らなかったんじゃなくて、私は“あの日”のことがきっかけで怖くて作れなかった」


正直、こんな話するのだって本当は怖い。

「“あの日”のことって……なにがあったの?」


“あの日”

いつかこんな話をしてしまえば、そう聞かれることなんてわかってた。


だけど、やっぱり怖い……

あの事を知られてしまうのが。