「ねえ、松井くん」
私は作業を止め、松井くんに声をかけた。
「ん?」
「聞きたいことがあるんだけどいい?」
「だめって言ったら?」
松井くんは、作業を続けたまま私の方を見ずに答えた。
「うーん……じゃあ聞かないかな」
嫌なら無理に聞かないほうがいいよね。
そんな答えに、松井くんはフッと笑った。
「ウソだよ。どうしたの?」
なんだ、ウソか。
「……やっぱなにもない」
「なにそれ」
松井くんは、優しく笑った。
ほんとはウソだったんだ。
聞きたいことあった、なんて。
ただ、なんとなく声をかけてみたかった。

