次の日、松井くんのことはもう忘れようと思いながら登校した。
「おはよー」
「おーっす」
廊下や教室中からそんな声が毎日のように聞こえる。
席に座り、荷物を出していると隣の席の椅子が引く音がした。
ゆっくりと隣を見た。
身長の高い、松井くんと目が合った。
松井くんは口元が少し緩み、
「おはよ」
少し小さな声で言った。
私も、挨拶を返そうとした。
でも
「ヒューヒュー」
「ださださコンビが見つめ合ってんぜー?」
そう茶化す人たち。
ほんと邪魔が入る。
そんな時、予鈴がなり授業が始まった。
そして私は考える。
おばさんの言っていたことは、信じないことにしようって。
だって、あんなにも普通だから。
私は軽く右を向いて、松井くんを見た。
うん、きっとなにかの間違いだよ──…

