──ピンポーン
《708》号室のインターフォンを鳴らした。
でも、なかなか出ない……
もしかして倒れこんでるとか?
それともさっきの話の……
──ガチャ
「はい………え、三浦さん?」
しばらくして出てきたのは、スウェット姿の松井くん。
「あ、えっと……」
出ないと思っていたから、なにを話せばいいのか吹っ飛んでしまった。
「ああ、今日帰ったら熱あってさ行けなかったんだ」
「あ、そっか」
「でも、だいぶよくなったし明日には行くよ」
一瞬私は、さっきのおばさんの話嘘じゃないかなって疑った。
でも、
「おいお前……ヒクッ……話はまだ……クッ……終わってねぇぞ……」
松井くんの後ろから現れた顔を真っ赤にして睨みつけるような目つき。
よろける身体を壁で支える……松井くんのお父さん。
背中にゾクリと電流が走った。
松井くんは、少し焦った顔をして私に
「ごめん、また明日」
そう言って、黒い扉を閉めたんだ……。

