藍那とも、雪くんとも話さなくなったこの日、廊下で麻紀にすれ違った。
ゾクリと背中にくる。
通りすぎる瞬間、耳元で
「来いよ」
そう言って、私の腕を力づくで引っ張る。
「いっ…つ…! 触んないで」
「……は? よくそんなこと言えるようになったね」
麻紀の顔が、曇った。
汚い手……。
「この汚い手、離してよ」
「は? マジなに? ちょっと来いよ!」
そう言って、さらに力づくで私を引っ張った。
──ドンっ!
「うっ……!」
体育館裏に連れて来られた私は、麻紀によって、押されて倒れた。
「調子乗んなよ」
上から見下ろす麻紀。
不意に、あの日のことを思い出した。
「……っ」
「私さ、なんでこの学校に来たと思う?」
そんなの、
「知らない」
「ふふ。またアンタを懲らしめるためだよ」
まただ。
また、悪魔のような笑み……。
ずっとこの笑みが大っ嫌いだった。
「あ、そうだあ。アンタに友だちいるんだって? 与沢藍那、だっけ?」
藍那……。

