「あ、忘れてた」 なにかを思い出したように声をあげた松井くん。 「どうしたの?」 「教室にまだ与沢さん残したままだ」 ──ズキ…… 藍那の名前が松井くんから出るだけで心が痛い。 「なん……で」 「え?」 「……あ、いや。なんでもない。そろそろ行こ?」 私今、なに言おうと…… 心の中で今思ったことは、 “なんで藍那なの?” なんて、ばかだ私。 そんなこと聞いたって、傷つくのには変わりないのに。 「そうだね」 松井くんは、ただそう言って私の肩を持ちゆっくりと歩いてくれた。