「......それくらい本気で好きだったんだよ」


私をジト目でみたにっしーに、そうだねとうなずいて、追加注文しようかとメニューを見る振りで、視線をそらした。


昔、好きだった人はもうとっくに過去としてきっちり精算している。大学に入ってから付き合った人だって、大変失礼ながらそこまで思い入れのある人はいない。


過去は過去、新しい恋をすれば上書きされるものなのかも。


けれど、新しい恋をしても上書きされない、いまだ過去というには過去にできていない人が一人。


「にっしーは......、いま彼女いるの?」

「俺?今はいないよ」

「ふーん、今はいないんだ」


小野くんの時と同じような反応をしたけれど、にっしーが今は彼女いないと知って、嬉しくて仕方なかった。


高校を卒業してから、離れてみて、私が何度も思い出した人は、小野くんでも他の誰でもなくにっしーだった。

何回会いたいと思ったか、何度連絡しようと思ったか分からない。


連絡しようと思うたびに、にっしー彼女いるかもしれないしと思いとどまったり、自分の方に彼氏がいたりでブレーキがかかって、今日までずっとできなかった。