莉王が去ったあと、ひとり倉庫に残った允は、彼女が消えた戸口を見ながら思う。 天野莉王(りお)か——。 いい名だ。 なんだか不動明王っぽくて。 そう言われて、彼女が喜ぶかどうかは別にして。 これでよかったのだろうかな、と思ったあとで、出て行く前の彼女の怒ったような顔を思い出し、 ま、よくなかったんだろうな、と思う。 古い携帯を手に電話をかけた。 「もしもし? 忍か?」 意外に早く出た相手は、大欠伸をしながら、文句を言った。