王様とうさぎさん

 老人たちの後ろ、すりガラスの戸の前を誰かが横切ったのだ。

 後ろならわかる。
 廊下のようだから。

 だが、ガラスの前を少し透けたような黒い影がよぎったのだ。

「允さん、此処、何処ですか?」

 向こうに筒抜けなのも忘れ、画面を指差す。

「そこは、本堂の隣の座敷だが」

「……そうですか」

 お寺だからかな。

 そう思い、気にすまいと思ったのだが、允の方がなにやら気にしているようだった。

 そのとき、老人のひとりが言った。

「まあ、允さんもいい人が見つかってよかった。

 花さんも別嬪だが、バツイチだから、どうかなーと思ってたんだよー」

 いやあ、あれだけ、いい女なら、文句はあるまい、と勝手に盛り上がっている。

 花さん?

「じゃ、またかけるからー」
と既にこちらにはあまり興味がない風な老人たちは、切り終わる前に、背を向け、菓子を食べ始めていた。