王様とうさぎさん

「よし、美人だ!」
と何かの宣言のように、及川は言った。

 美人だ、美人だ! と何か大事な確認事項を伝達しているかのように、後ろのオヤジと爺さんたちが口々に言い出した。

「これなら、證願寺(しょうがんじ)の嫁には負けんっ」

 どんな争いが巻き起こっているんだ、この地域は。

「よし、允。
 よくやった。

 しばらく、食事を楽しめ、お嬢さんに失礼のないようにな」

 寺の跡継ぎに、完全に上から物を言う総代に、允が、ありがたき幸せ、とでも言い出しそうだな、と思って見ていたが、允は、

「ありがとうございます。
 連絡、お待ちしています」
と笑って、それを切った。

 とりあえず、一度目のチェックは終わったようだ。

 まあ、この程度なら、なんとかなるか、と思ったとき、ちょうど蕎麦が来て、解放感からか、余計にその蕎麦を美味しく、素晴らしく感じる。

「此処、また来たいですっ」
と思わず、言っていた。

 允は、そうか、と微笑む。

 最初に倉庫に引っぱり込まれたときはどんな男だと思ったが、こうして見たら、結構感じいいじゃない。

 そう好意的に允を見てみたのだが、やはり、自分はまだまだ甘かったのだと、このあと、思い知らされることになる。