王様とうさぎさん

 


 山の中の蕎麦屋では、木陰のテラス席に座った。

 蕎麦が出てくるまで時間がかかったが、風が心地よく、葉陰からちらちらともれる光が降り注いで、実にいい感じだった。

 が、そこでいきなり、木のテーブルの上に置かれていた允の携帯が鳴る。

「もしもし」
と允が出ると、居るな? かけ直す、と相手は言ったようだった。

 携帯かけといて、居るなってのもどうなんだ、と思っていると、允が携帯をこらちに向けてきた。

 その小さな画面に、ハゲたオヤジと後ろに数人のオヤジが映っている。

 こんなことも出来るのか。

 すごいな、ガラケー!

 スマホ並みだ、と思っていると、アップで映っているオヤジが言った。

「檀家総代の及川だ。
 よろしく。

 あんたが、允の嫁さん候補か」

 ひいっ。

 全然、爺さんじゃない。

 脂ぎっている!

 新入社員が仕事ができるかどうか、値踏みする会社の上司のような目線だ。

 だが、まあ、そうなるか、とも思う。

 寺というのも、一種の会社組織だ。

「は、初めまして。
 天野莉王と申します」