王様とうさぎさん

 


 階段を駆け下りると、允の車はもうアパートの前に着いていた。

「ごめんなさい。
 お待たせして」

 遅れたわけでもないが、一応、そう言う。

 允が中から身を乗り出し、助手席のドアを開けてくれた。

 まあ、助手席になるか。

 後ろにふんぞり返るわけにもいかないしな。

 それこそ、王様だ、と思った。

 乗り込むなり、
「行きましょう、蕎麦屋っ」
と言うと、偉い気合いの入りようだ、と允は笑う。

 今日の允はスーツではなかった。

 そんなにラフな感じでもないが、会社で見るのとは雰囲気が違って、あらためて、格好いいな、とは思った。

 車の小物入れに突っ込まれた携帯を見ながら、
「まだ中継はないですか?」
と言うと、

「集まって、呑気にお茶でもしてからだろう」
と言う。

 そんな季節でもないが、こたつにおじいさんたちが寄り集まって、湯のみを手にしている風景が頭に浮かんだ。

 なんかほのぼのするな、と思ったのだが、甘かった。