王様とうさぎさん

 確かに允は強引だが、家に押しかけたり、勝手に上がり込んだりはしそうになかった。

 会社で倉庫に引っ張り込むのとはまた違うから。

 いや、まあ、それもどうかとは思うが。

 変わってはいるものの、きちんと育てられたらしい雰囲気の良さが允にはあった。

 急いで支度しなくちゃ。

 勝手なイメージだけど、あの人、行く、と言ってから、五分くらいで来そうに気がする。

 そもそも、何処に住んでるんだか。

 慌てて着替え、戸締まりをしている途中で、洗面所に置いたそれを見た。

 昨日買った、超高性能をうたっているマスカラだ。

 どうしようかな。

 いやいや。
 普段やらないことをやったら、失敗しそうだ。

 失敗しても、化粧直す時間も、もうないしな。

 そんなことを考えているうちに、案の定、すぐにスマホが鳴り出した。

 場所がわからない、という電話だったらいいな、と思ったのだが、もう下に着いたという連絡だった。

 やっぱり、こいつ、付き合い慣れてないな、と思う。

 女の子を迎えに行くときには、支度の時間も考えて、あんまり早く行かない方がいいのに。

 早めに準備していても、やっぱり、ちょっと変えてみようか、とか、此処が気になる、とかあるものだから。