「嘘、もうこんな時間だよ。
この家、店に居るときより、身体に悪いよ。
呑みすぎだよ〜」
と忍は泣きを入れながら、由莉子を振り返る。
立ち上がった忍を見ながら笑う由莉子はまだ呑んでいた。
真人はもう酒瓶を抱いて、折った座布団を枕に寝てしまっている。
……明日も仕事、あるのにな、と思いながら、討ち死にしたようなその丸い背中を見つめていた。
「忍さん、大丈夫?」
忍は帰る前にトイレに行こうとしたようだったが、らしくもなく、少し千鳥足になっている。
「大丈夫大丈夫。
武士はこのくらいじゃ、死なないから」
いや、貴方、武士じゃないうえに、言ってること、無茶苦茶なんですけど。
不安なので、莉王は縁側までついていった。
その先の暗がりにトイレがあるのだ。
忍が曲がった先の廊下の裸電球をつけたらしく、ぼんやりとそこが明るくなった。
明るい方がなんか怖いな、と思いながら、莉王は戻ってくるのを待つ。
やがて、ふらりと戻ってきた忍は、こちらに来る前に足を止め、開いている障子の向こうを見る。
「おっ。
此処かな、莉王ちゃんが寝ている先祖の間」
いつの間に、そんな名がついたんだ。



