王様とうさぎさん





 営業を訪れた莉王は課長となにか話したあと、すぐに帰っていった。

「今夜、来てね」
と耳許で真人に囁き、念を押した。

 莉王の長い髪が首筋に触れ、ぞくっと来る。

 無意識のうちにやってるからな、こいつは、と思いながら、真人はそれを顔に出さずに手を振った。

 お前のようなタイプは好みじゃなかったんだが。

 さっき、そう言った自分にどきりとしていた。

 なんで、過去形で言ってしまったんだろうな、と。

 今でも、清香や、花さんみたいなのがタイプのはずなんだが。

 この間、呑み会でアドレス聞いた子も同じタイプだ。

 廊下の方、莉王が機嫌良く歩いていくのが見えた。

 あいつ、基本、いつでも機嫌いいよな。

 なにも裏がない女は深みがなさそうだと思っていたのだが。

 莉王はどちらかと言えば、なにもかも自分の内に呑み込んで表に出さないと言うか。

 言いすぎか。

 きっと、なにも考えてないんだな、あれは、と思ったとき、デスクの電話が鳴った。

 それを取る。