莉王は、いつものように允の車に乗って、窓の外を眺めていた。
通勤中のこの時間、エアコンの効いた車の中で、ぼんやり出来るのはありがたい。
窓の外の緑も綺麗だし。
允の実家から職場に通うようになって、ずっとそう思っていたのだが、今日はちょっと違っていた。
あのー。
後ろに座ってるんですが。
黒部清香さんらしき人が……。
後部座席にいつの間にか座っていた清香は、自分と同じように、窓の外を眺めている。
そうしていると、親の車に乗って、ぼんやりとしている普通の女子高生に見えた。
ちら、と窺うと、允が視線を追う。
しばらくして、また見ると、また允がそちらを見た。
「……なんなんだ」
と前を見たまま、允は訊いてくる。
「いえあのー」
允に伝えるか、迷う。
まったくこっちを気にしていない清香は、允に此処に居ることを伝えて欲しいのだろうかな、と疑問に思ったからだ。
だが、今更、誤摩化せそうにもなく、莉王は允に言っていた。
「黒部清香さんっぽい人が後ろに居ます」



