王様とうさぎさん

「卯崎さん、早く結婚しないと」

「は?」

「お義母さん、孫を心待ちにしてるみたい」

 允は沈黙してしまった。

「どうかしました?」

「いや——。

 どういう意味で言ってるんだろうな、と思って」

 どういう意味もこういう意味も、そういう意味だが。

「でも、此処までしてもらって、花嫁がいきなり変わったら、お義母さん、びっくりしますよね」

 允はまた、黙る。

 なんだか今日はやりにくいな、と思ったとき、ぞくりとした。

 ちょっと厭な感じだ。

 そうっと振り返る。

 由莉子たちが居る部屋から漏れている光。

 その前に、誰かが立っていた。

 制服を着た少女。

 髪が長い。

 縁側の側、畳の上に立ち、自分を見下ろしている。

 一瞬、声が出なかった。