王様とうさぎさん

 初めて好きになったのが、花さんだったのか。

 初めて付き合ったのが、花さんだったのか。

 それとも——。

「誰か好きな奴が居るかと言われて、花さんと答えておけば、それで話が終わってたんだ。

 花さんは俺にとっての免罪符だったんだ。

 そう言っておけば、その場を逃れられるって言う」

 ああ、花さんね、なるほど、でみんな納得してくれるから、と允は言った。

「花さんと見合いしたくなかったのは、花さんが断れなくて困ったら悪いからっていうのもあるけど。

 ずっと思ってたんだ。

 お前はそういう人並みの感情がないと言われたりして。

 花さんを好きだと言っておけば、その場は、なんとかなったけど、でも」

 本当はちょっと不安だった、と允は言った。

「人にはそう言ってるけど、別に花さんを好きなわけじゃない。

 じゃあ、俺はやっぱり、感情の欠落した人間なのかと思ってたんだ。

 だから、花さんには会いたくなかった。

 顔を見て、やっぱり好きじゃなかったなと再確認するのが厭だったから」

「……私もです」

 夜道を真っ直ぐ見つめる允の横顔を見ながら、莉王は、つい、言っていた。