王様とうさぎさん

 



「そういえば、うさぎと結婚する夢を見ました」

 夜、鞄ひとつで允の車に、囚人よろしく収監された莉王は、舗装の悪い山道に揺られていた。

 今にも何か飛び出してきそうな鬱蒼とした木々の隙間の道を見ながら呟く。

「教会のバージンロードの先で、うさぎがタキシードを着て待ってるんです。

 こう、立ち上がって、手を前にだらりと垂らして、口許をはむはむ言わせてる。

 なんていうか……可愛いんだけど、どうしろとって感じで」

「で、お前はそれを俺に聞かせて、どうしろと?」

 いや、ごもっともでございます。

 唯一の拠り所のように小さな鞄を抱いて、莉王は言う。

「なんでこんなことになってるんでしょう?

 貴方が突然、倉庫に私を引っ張り込んだのは、つい、この間ですよ?

 どうして、わずか数日で、貴方の実家に花嫁として、泊まることに……」

「じゃあ、帰るか?」

 人の良さそうな由莉子や太郎、そして、及川や爺さんたちの顔を浮かんだ。

 なんだか裏切りづらい。

 だが、どのみち、結婚しない限りは、彼らを裏切ることになるのだが。

「卑怯です〜。

 允さんは卑怯ものです。

 あんなにみんなと親しくなったら、断れないじゃないですかっ」
と言うと、允は、吹き出した。