王様とうさぎさん

「だって、清香さん、そのとき、高校生だったんですよね?

 どんな状況だったのかわかりませんが、結婚しようって、なかなか言えないですよね」

 忍の方は大人だったのかもしれないが。

 それでもなかなか。

「勢いだよ、勢い」
と忍は言うが、忍にそんな勢いがあった時代があること自体が既に不思議だ。

 今はすっかり大人で、落ち着いていて、男女問わず、繊細な笑顔と軽妙なトークで手のひらの上で転がしてそうだ。

「ねえ、余計なことしゃべり過ぎちゃったところで着いたよ」

 車はいつの間にか、言った通りの住所に着いていた。

 忍は、タクシーの運転手さんにもなれそうだ、と思う。

「ありがとうございます。

 今度、なにかお礼しますね」

「じゃあ、美人のお客さんいっぱい連れてきて。

 常連さんになってくれそうなの」

 人妻でも大歓迎だと言い出す。

 人妻と忍さん。

 なんだか似合うな、と思ってしまうのは、やっぱり、忍が結婚しそうにないからだろうか。