王様とうさぎさん

「忍さん、本当に清香さんのこと、好きだったんですね」

「いや——。

 どうだろうね、よくわからない。

 可哀想な子だなって、いつも思ってた。

 でも、清香は、僕にはよく笑顔を向けてくれてたけど、別に僕のこと好きなわけじゃなかったみたいだ。

 ただ、自分に微笑みかけてくれる人間を恋しがってただけって言うか」

「騙されてたってそのことですか?

 ああ、突っ込んで訊いちゃってすみません」

 いいよ、さっきから、突っ込みっぱなしじゃない、と忍は言う。

「それだけでもないけどねー。

 もういいよ、過去の話は。

 でも、僕はあのとき、学んだんだよ。

 清純派に見える女ほど、恐ろしいって」

「なんだか急に言葉に力が入ってきましたね」

「だから、王様も正直、怖いよ。

 君、夜の街には馴染まないから、あんまりフラフラ呑み歩かない方がいいよ。

 浮いてるから」

「それって、私が大人になりきれてないっていう——」

 そういうのとは違う、と忍は言った。