王様とうさぎさん

「いえ、忍さんって、最初に見たとき、悪い男の代表みたいだなーって思って」

「なにそれ」

 乗って、と言って、忍はドアを開けてくれる。

「夜の街に居て、やさしくて格好いい。

 みんな簡単に騙されちゃいますよね」

「なんで騙すこと前提なの? 僕」

 いや、雰囲気ですよ、雰囲気、と笑うと、

「悪い酒だねえ、王様」
と言いながら、運転席に乗った忍はバックミラーを調節している。

「褒めてるんです」

「ぜんっぜん、褒めてるように聞こえないんだけど」

 車は結構な音を立てて発進した。

 だが、運転は穏やかだ。

「だいたいさあ。

 田舎でのんびり過ごしてるところを見たからって、悪い男でない、という保証はないよ、王様」

「それはそうなんですが。

 此処に家族とお住まいなんでしょう?」

「お住まいですが?」

「いや、なんかいいなあ、と思って」