王様とうさぎさん

 うさぎというには大きすぎる男は、仁王立ちになったまま、行く手を塞いでいる。

「莉王」

「いきなり呼び捨てですか」

「名前が気に入ったんだ」

 彼はそこで少し迷い、

「不動明王みたいだろ」
と言う。

 惑ったところを見ると、女に言って喜ぶ台詞ではないというのは、わかっているようだった。

 じゃあ、言うな、と突っ込みたいところだが。

 彼は、
「昼、付き合わないか」
と訊いてくる。

「まさかとは思いますが、私を待ってました?」

「そうだな。
 今日は社食は避けるだろうから、たぶん、下りてくると思ってな」

 お弁当だったら、どうするつもりだったんだ、と思った。