夏休みの間、
僕は、父の命令で、
仕事の手伝いをしていた。

父の代わりに、
日本で行われる会議やパーティに
出席したり、
会談や契約をこなしたり、
日々はあっという間に過ぎた。


父とこんなに電話をしたことは、
生まれて初めてである。


仕事のついでに、
プライベートな話もするようになっていた。


「要くんたちが正式に婚約したんだって?」

父が問う。
割とラフな父なのだ。

誕生日やクリスマスに
会いにきてくれる父親ではないが、
突然帰ってきては、
マシンガントークをして、
また突然帰る。

実は母もそんな感じ。

お祖父様の小言なんて我関せず。
仕事として、母は、
まさに父の右腕となり、
世界中を飛び回っている。

世界も彼女の動向に釘付けだ。

この人たちは、
利害が一致したから、
結婚したのだろう。

逆に羨ましい。

「はい。我が家を代表し、
日野原家より祝いの品と祝金を
お出ししておきました。」


僕がそういうと、
お父様は、礼を言い、


「お前もそろそろ考えるか?」


と聞いてきた。


どうやら、
本当にお祖父様の独断であり、
お父様たちは桜子さんのことを
知らないようだった。