「どうしたの?」



ボーッと西野の傷口を眺めながら考えているとキョトンとした顔で俺を見る。


あーもう何か全然変わってね…。


幼い顔が重なる。



「何もねーよ」



消毒をして大きい絆創膏を貼る。


にしても、なんでこんな大きい怪我になるんだろう。


転けただけで、擦りむき具合が尋常じゃない。



「いたたた…」



消毒がしみたのか目をぎゅっとつぶってこらえる。



「ははっ」



なんだか幼稚園児みたいで声に出して笑ってしまった。


すると、むっと怒ったような顔をして睨んできた。


ぜんっぜん迫力ないし…。


そんな大きな目で睨んでも、可愛いだけだし。



「なんで笑うの!」



私怪我人だよ?と付け足す。

待って、怪我人だから何なんだって。



「あの頃と何にも変わってないな」



またヒント出すから。


この言葉の意味でも考えれば?


どうせわかんないんだろうな。


意味わからないって顔して、俺は変な奴だって思うんだろうな。



今はそれでもいいや。
なんか楽しいし。


早く気づいてほしいけど、この距離感もけっこう好きだ。



この言葉のヒントの前に、動物園でヒントあげたからな?


消えてくものじゃなくて、ちゃんと残るもので。



ちゃんとカバンに付けてあるだろ?


俺があげたヒントを。



俺があげた日からずっと、リュックに付けてる。



その黒のベースボールキャップに俺が『やまとくん』だってこと、記してあるから。



帽子の中のタグに『尾原大和』って書いてあるから。