ユイはサルマゴナに再び歩み寄る。

「先の戦争で、シャテラリア国は地下の魔力を持った資源を手に入れたことは知っているな」

 サルマゴナは疲れた表情で自分の下げたばかりのレバーを見つめながら話し始めた。

「その資源によってこの国は、世界の誰もが認める財力と兵力を持ち、世界の中心という位置は不動のものとなるはずだった……我々は忘れていたのだ。力はかつて地下にあり、自然の中でバランスを取り、世界全体を動かしていたことを。国のためにしか使われなくなった資源は、バランスをくずして、さまざまな生物に影響を与え始めた。」

 サルマゴナはユイを見つめる。

「城と太陽神降臨の儀式を行う丘をつなぐ道の間に、モンスターが現れ、ユイに解決してもらった先の事件は、その前触れだったのだ。―――この城で何が起きているかだと?」

 サルマゴナは嫌なものでも見るように表情をゆがめる。

「地下の資源はモンスターだけでなく、その上に住む人間にまで影響を与えた始めたらしい。その影響スピードはすさまじかった。地下の資源を調査していた魔力研究者がその仲間に襲いかかってから半日、近くにいた者から次々に精神に異常をきたし、もはや城を封鎖するまでに至ってしまった。できるかぎり正気の兵士を連れてきたが…」

 サルマゴナは呆然と城を見つめている兵士を悲しげに見つめた。

「報告によれば、護衛の兵士とともにアキス王様は地下に入り、そのまま行方が知れないそうだ。もう私にはどうすることもできない。世界に太陽を呼び込む太陽王が死んだとなれば、我々はもう2度と、太陽を眼にすることはできない。世界は常夜となり…いずれシャテラリア国を中心とした太陽神界は滅びるだろう。」