うねうねとした獣道のような道を進んでいくと、別れ道に出た。

 足元では過去の冒険者によって作られたらしき木製の標識だったものが、無残にも破壊され、木片となって散らばっている。

「キャスケットさーーん!」

 ユイの心臓が早鐘のようになり始めた。

 声の限り叫んでいると、ふいに右手の分かれた道の方角から、キャスケットのものとは明らかに違う怒号のような人々の声が上がった。

 ユイが反射的に顔を向ける。

 ドーン!!!!

 1本の恐ろしいほどの火柱が木々の向こうの空に上がった。

 そこへまた先ほどの人々声が重なっていく。

 誰かが戦っている。

 ユイはできるだけ気配を消しながらすばやく進んでいった。

 たしか攻略のページによると、このまま森林を進むと、ひらけた空間に出るはず。

「うわっ!」

 なおも進み続けたユイに、ふいに大きくて重い物体が飛んできた。

 衝撃の後に重なるように大地に倒れる。

「なんなの?!」

 ユイが苛立たしげに上半身を起こしてひざの上を見ると、プレイヤーがすでに倒され、1ミリも動けなくなっていた。

 凍りついたユイに鋭い声が投げられる。

「ユイ!!」

 ユイは聞きたかった声に反射的に顔を上げた。

「キャスケットさん?」

 森林にぽっかりとあいた広場の中。

 膝元まで延びた雑草に身を埋めるように、何人もの冒険者がすでに動けなくなって倒れていた。

 その中央で、キャスケットがかろうじて身を起こそうとしている。

「ユイ、逃げて!」

 キャスケットは必死の形相でユイに叫んだ。

「みんな、なんで」

 ユイはわけが分からずにひざを折ったまま、微動だにできない。

 グァルルルルル

 地の底から響いてくるような唸り声が、広場の奥の木々から圧倒的な津波のように押し寄せてきた。

「なにが、いるの」

 完全にひるみ涙を浮かべているユイを尻目に、電柱のように立ち並んだ黒い木々の間から、それはゆっくりと姿を現した。