「家庭科室か~…
昼間は別に怖くもないんだけど、こんな状況じゃ何処にいても怖いよね」
私の言葉に、望絵は深くうなずく。
「………包丁が浮いて襲ってきたりして!
ポルターガイストとか起こりそうじゃない?こういうときってさ…」
「ちょっと望絵!
洒落にならないこと言わないでよ…!」
包丁とか…明美さんが自殺に使ったってこともあるし、暫く見たくもないんだけど…。
「さーて、どうやって探す?
二人で手分けするにしても懐中電灯が1個しかないから…」
「………望絵、その必要はないみたいよ?」
「え?」
家庭科室の扉を開けて懐中電灯の光を向けた瞬間、あきらかな存在感を放ったものが目にはいる。
9つある生徒用の長テーブルの、丁度ど真ん中に置かれたそれ。
昼間に見たら可愛いんだろうけど…今はとてもじゃないが不気味に見えてしまう、くまのぬいぐるみ。
「………ぬいぐるみ…?
あ、さっきのメモのあれ?」
「………じゃないかな。
中になにかあるかもね」
ぬいぐるみに近付き、迷いもなくそれを手に取った望絵にヒヤリとする。
幸いただのぬいぐるみだったみたいだけど、もし何かあったらどうするつもりだったのだろうか。



