「なに~?3人で狛くんの話?」


「うん…」


「狛くん格好いいよね~!
勉強も出来て運動神経も良くて、クール!
もう最高~」


「うん…え?」



私たちの会話に入ってきたクラスメイトの言葉に、顔をあげる。


………狛くん?


今、狛くんって言った?



「こ、狛くんの事、覚えてるの!?」


「え?覚えてるって…あたりまえじゃん。
同じクラスだし、人気者だし…知らない方がおかしいでしょ?」


「人気者…勉強出来て運動も…?」



知らない。


そんなこと、知らない。


だって勉強も運動も、する前にあそこに閉じ込められてしまって。


狛くんは存在が消されてしまったのに。



「………どういうことなの?
存在は…消えてたはずよね」


「……わからない…ね、ねぇ、狛くんって、私たちが行方不明になってる間…いた?」


「うん?行方不明になってるときは学校休みだったけど…でも、その前日に引っ越してきたよね?
学校再開してからずっといるじゃん。
変なの~」


「………………」



笑いながら答える彼女に、何も言えなくなった。



ちがう…ついさっきまで存在していなかったのに。


存在していたことになってる…?



「おい、狛は今どこにいる!?」


「ひゃあ!?な、なに、いきなり」


「いいから教えろ!!」


「さ、さっき向こうで見かけたけど…」



悠人に怒鳴られて小さく指を廊下の奥に向けた姿を見て、3人が一斉に駆け出す。



狛くんがいるのなら。


聞けば、全てがわかるかもしれない。