―――ザザザッ……
真上のスピーカーからノイズ音が聞こえてくる。
瞬間、スゥ、と『あの子』の姿が消えた。
何処に行ったのか、『この子』の姿も既にない。
『……朱里の気持ち、伝わったよ』
穏やかな声音でそう言った佐久間さん。
そして、待ちわびていた言葉が聞こえた。
『―――朱里、ゲームクリア』
たったの2文で終えられた放送に、全員が胸を撫で下ろす。
逃げ出そうとしていた足を戻して、朱里さんに歩み寄る。
堪えきれなくなった涙を流した朱里さんは、その場に座り込んでしまった。
「………朱里さん、言葉じゃなくても、伝わったね」
「…………うん……」
「朱里ちゃん、良かったね」
「……うん……!」
私と歩の言葉に、普段の気高い雰囲気を一切見せない曇りのない笑顔で頷いた朱里さん。
あとは狛くんだけだ。
『この子』の正体とか、狛くんのこととか、なんか色々気になることはあるけど。
そんなこと、実際はどうでもいいんだ。
ただ、ここから出ることに、今は意識を向けよう。
ここに来て、何度したかわからない新たな決意。



