えーっと…。


今、この茶髪くんはなんて言ったかな…?




す…き?




私を…?




どうして??




いつ?どこで?




どういうこと!?




「やっぱり出てけっヤンキー!チャラ男!花珠せんせーは渡さないんだからな!」

「せんせーがこんなのと付き合ったら、私せんせーのことみそこなうー!」



すかさず女の子たちが私の周りを取り囲み、男の子たちが前で防衛壁を築いたことで、私は茶髪くんから引き離された。


子どもたちのフォローにはげまされ、石になった思考回路をどうにか動かす。




「え、えっとー、これはなにかの冗談?最近の高校生の間では、そういう遊びが流行ってるの?」

「冗談でも遊びでもねぇよ。ちょーホンキ」



ってそんな軽そーに言われても…信憑性ないってば…。



「だ、誰かと勘違いしてるんでしょ?だって私、君とは初対面だし」

「勘違いなんかしてないし、初対面でもないよ。俺、いっつもあんたのこと見てたし」

「み、見て…!?」

「そー。あんたは気づきもしなかったけどね」



にらむように、茶髪くんの形のいい目が細まった。



そ、そんなコワい顔しなくたって…。



なんだか獲物を前にしたネコに目を付けられているみたいで、びくり、と緊張を感じる…。



「だから、この勉強会のこと知って、あんたにアタックできるチャンスだと思って来た。ついでに受験勉強もみてもらえるんなら、これ以上のラッキーはないしー」

「……えぇっ」

「俺の名前は、合田多希(あいだたき)。一応あんたと同じこの商店街の住人で、合田商店の息子だよ。よろしくね」




花珠(かず)。




多希はそう馴れ馴れしく私の名前を呼ぶと、ニッと笑った。