【短】イッショニ カエロウ



『ッツーーーーー』


彼女が向かった方を見ながらしゃがみこんで、手で顔を隠す



言い逃げだろ

ずるい


ちゃんと言えって?

ムリだろ!



『あーぁ、今からこんなに動揺してて僕は大丈夫なのか?』



恥ずかしさを隠すように、声にだしてみる


なに独り言なんて言ってんだろ






『帰るか』






いたたまれなくなり、彼女の行った方向に背を向けて帰路を急ぐ。



ピッピーーーー ピピピー


遠くで、騒がしくクルマのクラクションが鳴り響いていた。



その音が嫌に耳に付く



胸がざわめく。

苦しい。

なにかが迫ってきて、僕を押し潰す。

そんな奇妙な感覚。






それらは僕の足を速めていく。



ブーブー


マナーモードの携帯が震動を伝えて来る