新学期。



久々に3人で登校する。



又四郎。
遙。
カナ。



この夏休みに起きた、チョッとしたアクシデントは、それぞれ胸の中にしまい込んで。



まあ、少し無口な3人は気恥ずかしさと、また3人で学校に行ける嬉しさで、いっぱいなのだろう。



又四郎は、病室のベッドの時から何故か遙を意識してしまった。


家でも、遙とどう接していいのか解らない感じだった。



遙も、態度には出さないまでもかなり又四郎を意識していた。



忠明は、全く気付いていないのだが・・・。



又四郎にお尻を揉まれたカナは、更に又四郎と何を喋ったら良いか解らない。


事実、あのリハビリルームと退院祝いのパーティー以降、又四郎に会うのは今日の登校が初めてだ。



二人の女子の鞄には、弁天と大黒が変わらず揺れていた。



久々にそれを見た又四郎は、何故だか少しホッとした。




学校まで他愛ない話を続ける二人。
又四郎は無口に聞いている。


ほとんどが、何を言っているのか解らない会話だったが、二人を見ていると心が安らいだ。



「じゃ、又四郎、またお昼に。」


カナと遙は自分の教室へ歩いていった。



又四郎も自分の教室へ歩いていく。




なんと久しぶりな事か。


教室のドアを開けると、皆が一斉に又四郎を見た。



「高柳君。お早う。」


真っ先に挨拶をしてきたのは瀬戸未来。委員長だった。



それに続くように皆が又四郎に挨拶をする。



な、なんだこやつら。
内心ビックリした又四郎だったが、



「うむ。皆久しぶりだな。元気だったか。」



と、一言を放った。



教室中に笑いが起こった。



「つーか、元気じゃなかったの高柳だけだって!!」


誰かが言うと、皆がさらに笑う。



「おお、そうだったな。色々心配を掛けた。」



又四郎を中心に皆が集まった。



それは、転入してきた時の、悪意がある興味ではなかった。


何かの呪縛から解放されたかのような、自然な感じだった。



又四郎は席に座る。



隣には平賀の笑顔があった。



「又四郎君。久しぶり。また、よろしくね。」



「ああ。お主も元気そうで何よりだよ。」



澤部一也が、夏休み中に学校を去り、実質彼の支配構造が無くなったクラスは、明るくなった。



空気と言う悪習もどうやら無くなったようである。



又四郎にはそれが感じとれた。



新学期のクラスの雰囲気は、又四郎にとっても居心地が良いものだった。