「又四郎!!それで良いの!?」



遙の声が病室に響いた。


「ああ、遙殿。わしの未熟さが招いた結果だ・・・。
近藤達に罪はない。」



又四郎は静かに言う。



「力無き者が、徒党を組み、闇討ちする事など日常茶飯事。
剣客は、常に全てを含めて隙を作ってはならぬもの・・・。
わしに隙が有ったのだ。」



「で、でも死にかけたんだよ!?殺されそうに成ったんだよ!?」



又四郎は遙の目を見て首を傾げる。



「大丈夫。見ての通りピンピンしておる。
それに・・・。」



又四郎と遙は声を合わせた。



「わしらはもう、死んでいるではないか。」



「でしょ。もう、覚えたよ・・・。」



遙は溜め息をついた。



そしてクスクスと笑いだした。



又四郎も釣られて笑い出した。



「いたたたっ・・・。まだ、傷も完全に治った訳ではないのに、笑わせるな、遙殿!」



笑いながら遙は言った。


「又四郎・・・。心配したんだからね・・・。本当に・・・。」



瞳にはうっすらと涙が光っていた。



笑い涙か、安心の涙か解らないが、又四郎は遙に言った。



「心配してくれて、ありがとう。」




いつぶりだろう・・・。
ありがとうなどと言ったのは・・・。


死の淵で、ハルに会って、目が覚めて遙に会って・・・。


固まっていた心のシコリが、優しくほぐされていくような忘れていた感情。



ありがとう、か・・・。



又四郎は良い言葉だな、と、心の中で囁いた。




ガチャン!



病室のドアが開く。



カナと委員長、平賀と沖田が流れ込んできた。




病室は賑やかになり、又四郎を皆が囲んだ。



又四郎は身体中が痛むのを堪え、ニコヤかに話を聞いていた。