教室に戻った又四郎と委員長。



生徒達は又四郎だけを無視する。


困惑する委員長をしり目に、又四郎は黙って自分の席に座る。


平賀はうつ向いたまま、又四郎を見もしない。


「平賀殿、先刻の無礼申し訳無い。」

平賀に対して頭を下げる又四郎。


平賀は何も言わない。


又四郎は正面に向き直る。


クラスメイトは又四郎が転入してきたことを無かった事のように、無視し始めた。



当の又四郎は、全く意に介していない。

むしろ、鬱陶しくなく気分が良い。


授業は何を言っているのか解らないので、目下精神統一と座禅。心肖対決を行っていた。


今まで戦った数々の剣客や武芸者と心の中で対決する。


じっとりと脂汗を流し、真剣に戦う。


授業中にも関わらず、体から闘気を放っていた。
それはそれは、目立っていた。



昼休み。


遙とカナが一緒にお昼を食べようと誘いに来た。

「又四郎!お昼食べようよ。」


「うむ。少々腹が減った所だ。有り難く頂こう。」


3人は屋上へ向かって行った。



平賀は皆とお昼を食べる事に、強い違和感を覚えていた。

つい、さっきまで自分を無視していた奴等と、何が楽しくて昼飯を食べるのか。


しかし、抗議する勇気がない。


愛想笑いを浮かべ皆と一緒にお昼を食べる。



委員長も中の良い友人二人とお昼を食べる。

友人二人は、教室以外は空気扱いはしなかったが、やはり皆と一緒に無視をしていたのには変わり無い。

委員長も平賀程ではないが、未だに違和感を感じていた。



又四郎に会い、二人の意識は僅か数時間で変わっていた。



クラス中が、又四郎の噂で持ちきりだった。

なぜ、小野遙と市井カナの美少女校内トップテン入りする二人と、仲が良いのか?

朝3人で登校していたとか。


様々な噂がクラスに広がっていた。


お昼を食べながら、皆が話す内容は、又四郎の事が殆んどだった。



平賀も、委員長も、又四郎を空気扱いしないで、仲良く話をすれば良いのにと思っていたが、二人とも声を出して訴える事は出来なかった。



「にしても、あいつ、なんであんな言葉遣いなの?電波なの?中二なの?」

ギャハハハッ。

「んで、裸足でスリッパだよね。」


ギャハハハッ。


誰もが又四郎を馬鹿にしたように話し、盛り上がっていた。



「もう、止めてよ!!」

突如、委員長が立ち上がって叫ぶ!!


「高柳君は、皆が馬鹿にしているような人じゃ無い!!」



静まりかえる教室。



言ってしまった・・・。

委員長は後悔するが、それよりも、又四郎が馬鹿にされている事が許せなかった。


いつ振りだろう。

人の為に怒ったのって・・・。



「そ、そうだよ!高柳君にきちんと話せば良いじゃないか!影口なんて、やっぱり良くないよ!」

平賀も堪らずクラスメイト達に抗議した。




「あれあれ〜、元の空気二人が何か言ってるんですけど〜。」

クラスメイトの一人が言った。

「なになに〜ちょーし乗ってんじゃん。うっぜぇ。」

「元空気が喋ってんじゃね〜ぞ、マジキモいから!」


二人に罵声が浴びせかけられる。


「つーかさ、この二人キスさせちゃわね?」


誰かが悪ふざけに言い出した。


「ああ、空気が空気同士、喋れねーように口塞いじゃう?」


「いいね!やろうやろう。」


クラスメイトは二人を取り押さえ、無理矢理キスさせようと、頭を押さえ込み近付けさせる。


「誰か〜動画撮っとけよ〜。」


クラスメイトは笑いながら委員長と、平賀の唇を合わせようとしていた。

「キス!キス!キス!」クラス中は茶化す声で溢れる。



「おい。貴様ら、一体何をやっている。」


教室の入り口に、又四郎が立っていた。


「少し、悪ふざけが過ぎるのではないか?」


又四郎は淡々と話す。



「んだよ!中二電波野郎!平賀にやられるような奴なんか、全然怖くねぇんだよ!!」


クラスメイトの一人が又四郎に殴り掛かってきた。


又四郎はその攻撃を容易くかわし、足を掛けて転ばせる。



「ほら、わしに不満のある奴。遠慮無く掛かってこい。どうした?怖じ気付いたのか?」


クラスメイトを挑発する又四郎。


腕に自信のあるクラスメイトが数名、又四郎の前に出てくる。


「さて、腹ごなしに軽く運動をするか。」



又四郎はニャリと笑う。