平賀の提案はこうだった。



あらかじめ動きを決めて、並外れた身体能力を誇る又四郎をメインに組み立てる。

この場合、切る側よりも切られる側が上手でなければ成り立たない。

おのずと、又四郎、沖田、遙、乙女の四人は切られる側になる。



「ぬあっ!納得出来ん!!何故わしが平賀に殺されなければならぬのだ!」


「又四郎君!落ち着いて!演技だから!あくまで切られるふりだけだから!」


平賀は必死で又四郎に説明する。



「平賀君。構成を変えよう。」


沖田は又四郎を無視して言った。



「前半は、瀬戸さんと平賀君の演武にして、後半は一人の女性の為に闘う決闘にしてみないか?」


「こ、こら沖田!わしを無視するでない!」



平賀は沖田に言う。


「あ、それ面白いかも。そこで沖田君と又四郎君が闘うって感じにしようよ。」


ピクッ。


又四郎が黙る。


「そうすると、小野さんか伊東さんのどっちかになるね。二人が求める相手は。」



「ち、ちょっとちょっと!私嫌だよ。そんな恥ずかしい役!」


乙女は真っ向から拒否する。


「う、うん・・・。私もチョッと恥ずかしいかも・・・。」


遙も拒む。



「良いんだよ。二人とも、あくまで演出なんだから。そこから何か有るとかじゃないし。」


平賀は二人に言い聞かせる。



困惑する遙と乙女。



「良かろう。最初に平賀に切られて、その次は沖田と決闘か。面白い。」


又四郎の目がギラギラと輝く。



「うん。又四郎。どうせなら、勝敗は決めずにガチでやってみないかい。」


沖田は涼しげな眼を又四郎に向けた。


「真剣勝負と言う意味か。望む所。」



完全に置いてけ堀の四人。



「あの・・・。あくまで一人の女性をめぐる決闘の演技だからね・・・。」


平賀は言うが、二人には聞こえていない。



「チョッと!私達はどうしたら良いの!」


遙と乙女は男子達に抗議する。



瀬戸は、一部の構成に頭が一杯のようで、周りが見えていないようだった。




その後、八時近くまで議論は続き、ようやく議論が纏まった。



一部では平賀と瀬戸の二人がメイン。

内容は忍者に扮した四人を、殺陣で派手に切り伏せる。
特にストーリー性は無く、インパクト重視の演出。


二部は一人の女性を巡って二人の侍が闘う。
ストーリー性重視で、若干台詞を交え、沖田と又四郎が真剣勝負をする。

因みにじゃんけんで負けた遙が、二人を手玉にとった女性役に決定。


乙女は女性役にならず、本気で喜んだ。


遙は渋々役をやらざる負えなくなった。



文化祭まで3週間。



過酷な日々が始まろうとしていた。