「熱っ、」
たこ焼きを口に入れた佐伯先生が顔をしかめるのを見て、子供みたいだと思わず笑ってしまう。
「美味しい…」
いつもよりずっとたこ焼きが美味しく感じるのは、焼きたてだからってだけじゃないと思う。
隣で佐伯先生が同じものを食べてる。
それだけで3倍くらい美味しく感じてしまうなんて、不思議だなぁ…。
「…七瀬と、仲良かったっけ?」
ポツリと独り言みたいに小さい声で呟いた佐伯先生の言葉に、首を傾げる。
七瀬くん、と?
「なん…」
「杏奈」
“何でですか?”
そう聞こうとした言葉は、一瞬でかき消された。
「七瀬くん…」
そこには少し怒ったような、不機嫌な七瀬くん。
その鋭い視線は、佐伯先生に向けられているような気がする。
佐伯先生を見ると、同じように七瀬くんを見る視線はいつもより強い気がした。
…どうしたんだろう?
「杏奈、花火見ないの?
場所取ってあるから見に行くぞ」
「あ…ごめん、佐伯先生とー…」
先佐伯生と見たい。
それが一番はっきりとした気持ちだったけど、佐伯先生の立場とか、迷惑とか。
そういうことを考えると最後まで口に出せなかった。
「始まっちゃうから早く行くぞ」
やっぱりどう考えても不機嫌な七瀬くんがどんどん先を歩いてしまうから。
どうしよう、と佐伯先生の方を見たけど。
俯いた佐伯先生の表情は、前髪と眼鏡に隠れて分からなかった。



