「ありがと、でも大丈夫だから水島さんは皆と楽しみな」
そう言ってくれる佐伯先生は優しいけど優しくない。
私の気持ちだって分かってるはずなのに。
だけどそうやって突き放すのが優しさなんだとしたら、佐伯先生はやっぱり優しすぎる人だ。
「いいんですか、佐伯先生お腹空いてるんじゃないですか?
今を逃したら夜ご飯食べ損ねるんじゃないですか?」
お祭りのこの雰囲気と、暗闇に浮かぶカラフルな提灯は、私の心をコントロールできなくする。
いつもならこんな大胆なこと言えない。
だけど、お祭りだから。
着ている服が浴衣だから。
なんだか魔法がかかったみたいだ。
佐伯先生は図星を指されて、言葉に詰まった。
その前をカップルが、ほかほかと湯気の出るたこ焼きを美味しそうに食べながら通り過ぎた。
「…ごめん、食べたいです」
申し訳なさそうに、恥ずかしそうに目を逸らす佐伯先生。
下を向いていても、少し顔が赤いのが分かった。
「っ、」
何それ、可愛い。
ずるい、こんなに可愛い顔するなんて、ずるい。
せっかく珍しく私のペースだったのに、すっかりドキドキしてしまっているのは私だ。
大人なのに、こんなに可愛くて。
可愛いのにそれでも、格好良くて。
確信犯なんじゃないかって思うくらいに、私の心を奪う。



