佐伯先生の優しすぎる嘘



おお、とこちらを向いて手を振る佐伯先生の腕は、夏になって少し日焼けしたように思う。


前髪と浴衣が乱れていないか、ササッと確認する。


少しは大人っぽいって思ってくれてたりしないかな、なんて。


唇に塗ったグロスから、桃の甘い香りがした。





「佐伯先生、見回りですか?」


駆け寄ってそう聞くと、


「そうだよ」

と少し面倒臭そうな顔をした。


学校の近くのお祭りなので、毎年先生が見回りに来ることが多い。

先生は見回りなんて面倒臭いだろうけど、お祭りで佐伯先生に会えるなんて嬉しすぎる。


神様ありがとう、と心の中でお礼を言って、もう一度佐伯先生を見上げる。




「何か食べました?」


「一応仕事中だから食べてないよ。

…っていうより、この列に一人で並ぶのは、ちょっと」




カップルばかりのたこ焼きの列を見て、困ったように笑った佐伯先生。

たしかに、このお祭りに一人でいるのも仕事でなければなかなか辛いものがあるだろう。



ソースのいい匂いが鼻をくすぐる。




「じゃあ一緒に並んであげますよ?」



少しでも佐伯先生と一緒にいたいのは私の方なのに、恥ずかしくて冗談っぽく言ってしまった。