佐伯先生の優しすぎる嘘




「え、佐伯先生!?」





遠くから、お祭りの賑やかさに紛れて聞こえたその声に、反射的に振り返った。


と、少し離れたところに、浴衣姿の女の子たちに囲まれた佐伯先生がいた。


学校にいた時と同じ、白いボタンダウンのシャツ。

袖をまくった腕に、ゴツめの腕時計が大人っぽくて好きだ。




どんなに遠くても見つけられる姿。

どうしたって耳が勝手に拾ってしまう“佐伯先生”って言葉。




会えた…!


それが嬉しくて、にやけてしまいそうなのと反面に、楽しそうに喋る女の子たちに嫉妬している自分がいる。



あの中に、入っていくことなんてできない。

…意気地なしだな、私。



そんなことを思いながら、目を逸らした。





「杏奈!」



突然駆け寄ってきた夕羽に、驚いてカキ氷をこぼしそうになる。



「な、なに!?」



「佐伯先生!見た?!」



耳元で小声で聞かれた言葉に、頷く。



「行かないの?」


行きたいけど、楽しそうだし。

いつものように優しく女の子たちに笑う佐伯先生に、声をかける勇気は出ない。





「佐伯先生ー!」




…そんな私の気持ちを知ってか知らずか、大声でその名前を呼んだ夕羽。

尊敬する。