「無理、しないでくださいね」 本当はもう少し喋っていたかったけど、佐伯先生が疲れているならやめておこう、と背を向けた。 「ありがとな」 不意打ちのそんな声に、驚いてパッと振り返ると。 佐伯先生は既に後ろを向いていて、手だけをひらひらと振ってくれた。 ああ、もう、全部。 この人の全部、あたしのツボなんだ。 小さく伸びをしてパソコンと向かい合う佐伯先生から視線を外して、職員室を出た。